企業がお金を集めるために発行する株式や債券(社債)を個人投資家に買ってもらおうと、優遇策を打ち出すようになってきた。
株主優待だけでなく、株の保有が長い株主をさらに優待する企業が増えている。
株や社債をすぐに売らずに、長い目で企業の成長を見守ってくれる人を増やし、株価や社債の価格を安定させようと考えているからだ。
株主優待例
玩具大手のタカラトミーは6月(2014年)、株主が自社サイトでおもちゃを買う時の割引を始めた。
株の保有期間が1年未満の人は1割引だが、3年以上なら4割引く。
日本製粉も来年(2015年)から、株を1年以上持つ人を優遇する。
毎年贈るパスタなと3千円分の自社製品に加え、長期保有者には1,500円分追加する。
長期株主優待企業の現状
投資情報の発信を支援する野村IRによると、「株主優待」と呼ばれる優遇策を持つ企業は今年7月末、全上場企業の3割の1137社あった。
このうち、株を長く持つ人をさらに優遇する制度があるのは118社だった。
2003年の2社から徐々に増え、この2年間では約6割増と大幅に増えている。
株主を増やす効果は出ている。
2010年からの3年間をみると、優待がある企業の株主数は25%増で、ない企業の13%増を上回った。
株を長く持つ人を優遇する企業だけでみると、株主は37%増とさらに伸びを大きい。
社債の優待
企業が投資家に直接売る社債でも、個人向けに発行し、「おまけ」をつける企業が増えている。
アイ・エヌ情報センターによると、今年1~8月に発行された個人向け社債は計1兆57億円にのぼった。
昨年の同じ時期に比べると減ってはいるが、2012年から3年続けて1兆円の高水準が続く。
東武鉄道は、抽選でスカイツリーの展望台入場券が当たる。
ソフトバンクはオリジナルキャラクターのバスタオルを贈る。
発行後の社債は債券市場で売買されるが、取引するのは大口の投資家が大半だ。
長期株主優待の背景
個人株主を増やそうとする背景には、取引先などと企業どうしで株を保有しある「持ち合い」が減り、株価が上下しやすくなっているとことがある。
野村證券のまとめでは、全上場企業の株式時価総額に対する「待ち合い株」の割合は2013年度末には11%になり、1990年度の34%から大きく減った。
今後も減る見通しだ。
代わって増えているのが外国人株主。
企業の経営について厳しく指摘し、期待通りの成長が見込めなければ株を売る人の割合が高いとみられる。
このため、株価を安定させる対策の一つとして、企業は個人投資家に期待する。
(朝日新聞2014/9/26記事参照)