商品先物取引の規制緩和は、消費者庁などが「待った」をかけて1年近く動きが止まっていたが、条件付で認められる見通しとなった。
消費者保護の関係者からは、市民がトラブルに巻き込まれることを心配する声もある。
商品先物取引の問題点
商品先物取引は値動きが激しく、大儲けできることもあれば、大きな損失を抱えることもある。
2000年代に入り、取引が増えるにつれて苦情や相談も目立ち始め、投資に慣れていない高齢者などから「絶対もうかると言われて始めたが、大きな損失が出た」などの苦情が相次いだ。
これを受けて商品先物取引法が改正され、2011年1月には取引を望まない消費者を電話や訪問で勧誘することが原則できなくなった(不招請勧誘の禁止)。
全国の消費生活センターなどに寄せられた相談や苦情は、2010年の約3700件から2013年の約800件へと減った。
その半面、東京商品取引所の売買高は2014年に、ピークだった2003年の約4分のⅰまで急減。
業者数もピークのころの100社ほどが、約30社まで減った。
商品先物取引の規制緩和の背景
規制緩和で経済を活性化させるという政権の大きな方針もあり、経産省と農水省は、これまで消費者保護のために強化して規制を緩める方向にかじを切る。
経産省は東京商品取引所の経営陣に天下りするなど業界に強い影響力を持つ。
経営が苦しい先物業者や取引所にとって、規制緩和は朗報だ。
「重要な社会インフラである商品先物取引を守るべきだ」として、緩和の条件がなお厳しすぎると主張する声もある。
被害は防げるのか?
今回、年齢や収入、資産など一定の条件をつけることで、取引の危険性を理解しないまま大きな損をすることを防ぐ仕組みはつくるという。
しかし、きちんと機能するかどうか未知数。
弁護士団体などは「いまも先物取引の勧誘で、多額の損失を受ける被害が少なからず発生している」などとして、条件が緩和されればより多くの人が勧誘を受け、被害の広がるおそれがあると反対していた。
消費者の被害が広がった時には、行政の責任も問われることになる。
(朝日新聞2015/1/23記事参照)